発見する器

日常の考察、真実の追求、感性にピンと来たもの、好きな音楽。

ものがたり

社会の窓、割れ窓理論

「社会の窓」が開いている男性を目の当たりにする状況は唾棄したくなるほど嫌悪感を催すものだが、実際にはその隙間から何かが垣間見えていることはほぼない。ジッパーがそこまで大きく開くわけではないし、ズボンの生地の立体感が中のものを幾重にも隠して…

完全自由人

「観測=監視=視線」が人間の行動のすべての起点となる。であれば、視線を全く気にせず、同時に他者の行動や振る舞いも認識できる人間がいればどうなるか? それが「完全自由人」。 他者に全く干渉されないニュータイプの人間。 そんな生物はいない。 エコ…

完全自由人

「観測=監視=視線」が人間の行動のすべての起点となる。であれば、視線を全く気にせず、同時に他者の行動や振る舞いも認識できる人間がいればどうなるか? それが「完全自由人」。 他者に全く干渉されないニュータイプの人間。 そんな生物はいない。 エコ…

変な話

家に帰るために電車に乗ってました。 座席はすべて埋まっていて、吊り革に捕まっている人も一つおきにいる、そんなまあまあな混み方でした。 私がドアに向かって立っていると、坊主頭の高校生がドアの脇に来ました。何か部活をやっているようで大きな荷物の…

右脳と左脳には個別の人格が存在する

昔々あるところに若いクリエイターとそれよりももう少し若いビジネスマンがいました。クリエイターが会社を創業し、ビジネスマンは3年後にそこへジョインしました。 それまではクリエイターが好き勝手にやっていた会社でした。論理思考が得意なビジネスマン…

武甲田俊記の世界観

クソやな、コイツ。 武甲田は三年目で一目置かれている杉野の、「ただやるだけっす。それだけ」という挨拶に対して吐き捨てるように思った。据わった眼差しで杉野のスッとした横顔を睨む。 みんなが拍手する。二十人ほどに囲まれた杉野は、照れる素振りも見…

街からは出られない

私の名前は吉備田という。この街では珍しがられる名前だ。家族以外で同じ名字の人に出会ったことはない。曾おじいちゃんの代に、東北のほうから喜与町に移り住んだと両親に聞いた。 わざわざ私が自分の名前を言い、自分のルーツを紹介するのは、それがこれか…

tが流れている。

tが流れている。自分のいる場所からさらに先の方へ。後ろを振り返ると、tの流れは大きなうねりとなってだいぶ遠くの方まで道筋を作っている。ただしここでは遠さに意味はない。足を一歩踏み出せばtの流れが一気に急になり、はるか彼方まで移動できる。tを一…

死んだら ンム になる話

ある国では人が死ぬと、いったん「ンム」という存在になると言われている。そこで49日を過ごした後、すべてが消滅し、生ある者からは本当に届かない世界に行ってしまうと言われている。 ンムは魂そのものと言っていい。ンムに肉体はなく煙のように透き通った…

おらが村のスタァ

友人でいつも飄々としている詫草カオルが、実はド田舎出身だということが発覚し、俺は愉悦の気持ちに浸った。彼が本気で隠していたその事実がなぜわかったかというと、彼が話す電話の内容を壁一枚隔てた廊下で盗み聞きしたからからだ。「かぁっちゃ、おら、…

空港

「空港っていかした名前だよね…。だって空の港だぜ。考えた奴はとてもクールだ…」と惚けた顔で呟いたのはジョニーK。生粋の日本人である。鳥取県出身だ。今日も全身をユニクロで固めている。丈がわずかに短いと思われる濃いインディゴジーンズからは、アン…

エクステリア

使い古したノースフェイスの黒のバックパックを搭載。睫毛のエクステンションは標準装備。頭のモヒカンにはハードグリースを装着。足下の8ホールDr.マーチンが小石を蹴る。指先には磨かれたラメグラデーションのジェルネイルが。スキニーパンツに包まれた肉…

コンデジでいいから

一眼レフがほしいんだよね——ぼくがさりげなく繰り出した嘆願を、君はつれなく葬った。「コンデジでいいから」 しかし、それは優しさの裏返しでもあるよね。だって、カメラは買っていいということだから。ぼくの持っているiPhone 5Sでも十分に綺麗なスナップ…