発見する器

日常の考察、真実の追求、感性にピンと来たもの、好きな音楽。

tが流れている。

tが流れている。自分のいる場所からさらに先の方へ。後ろを振り返ると、tの流れは大きなうねりとなってだいぶ遠くの方まで道筋を作っている。ただしここでは遠さに意味はない。足を一歩踏み出せばtの流れが一気に急になり、はるか彼方まで移動できる。tを一つすくい取ってみると、それは砂のように瓦解してサラサラと指の間からこぼれ落ちた。ふと見上げると、目の前に19歳の男がいた。19歳の男は、おれにwを渡してきた。wを触ると硬質で、ザラザラとしている。おれは少し力を込めて彼のwを柔らかくし直し、彼の手に返した。wは雲のように膨らんで霧のように消えた。彼が微笑んだように見えた。


彼が去り、おれはふたたび旅を始めた。さっきまでそのあたりに浮かんでいたteは、もはやだいぶ少なくなってきて、おれはコートの襟を直した。