使い古したノースフェイスの黒のバックパックを搭載。睫毛のエクステンションは標準装備。頭のモヒカンにはハードグリースを装着。足下の8ホールDr.マーチンが小石を蹴る。指先には磨かれたラメグラデーションのジェルネイルが。スキニーパンツに包まれた肉付きのよいヒップで方向転換。トレイルランニングによって鍛え抜かれたハムストリングスがアクセルを強化。しなやかに伸びた前腕が前後し、加速装置となる。薄皮のごとくまとわりつくガーゼ素材のTシャツは防護性には欠けるが、肢体のラインを露わにする柔らかな素材と、所々ダメージを負ってほつれ、破れることで実現された荒々しいテクスチャにより、周囲に対する存在感を強めていた。
刺激的で華美なクリエイションが施された彼女のボディ。モダニズムと伝統が調和したエクステリア。装飾なしでは生きてはいけないとさえ言える21世紀のアンドロイド風ホモサピエンス。その身体はもはや現代アートのコレクション。時代のターニングポイントを記録し続けるレポーターとしての役割を与えられた生けるマネキンである。
