発見する器

日常の考察、真実の追求、感性にピンと来たもの、好きな音楽。

変な話

家に帰るために電車に乗ってました。

座席はすべて埋まっていて、吊り革に捕まっている人も一つおきにいる、そんなまあまあな混み方でした。

 


私がドアに向かって立っていると、坊主頭の高校生がドアの脇に来ました。何か部活をやっているようで大きな荷物の入ったリュックをだらしなく片手に下げて、もう片方の手でスマホを持ってじっくり眺めています。イヤホンをしていたので何か動画を見ているのでしょうか。

 


発車間際のベルが鳴って、おじさんが二人、駆け込んできました。一人はなんとランニングウェアを着ていて、ランニング中にそのまま電車に乗り込んできたようないでたちです。そのまま、もう片方のドアの脇に寄りかかりました。汗をかいて息も切らしていたので、周囲の人はさぞ不快だったことでしょう。

 


反対の脇に立っている高校生のリュックからだらりとしたベルトが床に垂れていたのですが、そのランニングおじさんは気づかずにベルトを踏んだままハアハア言っていました。動画に夢中の高校生も気づいていません。

 


そのすぐ後に、これまた身なりが綺麗とはいい難い初老のハゲて太った男性が、発車ギリギリに乗り込んできました。その男はそのままドアを前にして仁王立ちとなりました。

 


電車が動き始めて私の駅に到着です。私が「こんな親父たちの間を潜って降りるのか、嫌だなぁ」と思いながら、一歩踏み出すと、思わぬ出来事が起こりました。

 


高校生が駅に着いたことに気づき、乗降客の邪魔にならないようにしたのでしょう、自分のリュックを引き上げました。

 


しかしそのベルトはランニング男に踏まれていたので、ドアの前でベルトがピンと張る形になりました。

 


初老の男性はここが目的地だったようで、電車から降りようとした矢先に、ベルトがピンと張られたため、思わず足を引っ掛けて転びそうになりました。

 


彼は足を引っ掛けたのがランニング男の仕業だと思ったようで、激昂した面立ちで振り向くと、ランニング男を睨みつけました。ランニング男は汚い身なりの初老男性に睨まれて、汗だくの顔を戸惑わせていました。高校生は何が起きたかわからず、スマホから目を離して両者を交互に見つめていました。

 


そんな中年男性同士のいがみ合いを尻目に、私はそそくさと脇を通り抜けました。自然の不可思議さを見た、と思いました。

 


さて、この顛末の加害者はいったい誰なのでしょうか?リュックを引いた高校生? それとも気づかずに加担したランニング男? いやいや、足を引っ掛けられた初老男性が足元も注意せずに怒るのが悪い?

 


人生とはかくも不思議なものだなぁと思いました。