発見する器

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【移住】大事なのは「場所」よりも「コミュニティ」なのではないかという説

移住について考えている。

移住したあとしばらく経つと、それが成功だったか、失敗だったかを考えるときがくる。その際に基準になるのは、「経済」でも「子育て」でも「個人の趣味」でもないのだと思う。ということに今日気づいた。

 

「コミュニティに所属しているか」——これだ。

 

無論、人は何らかのコミュニティに所属しているのが普通なので、その質の高さ、密度の高さということが判断ポイントになる。

移住したときによく問題になることは次のような点だ。

  • 思うような仕事がない
  • 収入が低い
  • 同じような環境の友達や仲間ができない
  • 周りの人と価値観が異なる
  • 旦那の親と仲良くできない、息が詰まる
  • 買い物をする場所がない
  • 他の都市に行こうにもアクセスが悪い

一方、成功したという人の意見は次のようなことが多い。

  • 都会ではできない仕事ができた
  • 同じような環境・価値観の仲間がいる
  • 子育てがしやすい
  • 自然が豊か
  • 広い家が建てられた
  • 静か、環境がよい

成功者の意見をよく見てみると、実は都市圏でも実現できるものが多い。例えば「自然が豊か」は東京都市圏に属する埼玉や千葉でも住む場所によって享受することは可能だ。「子育てがしやすい」や「静か、環境がよい」というのも、ごく小さな自分の周りの、ある意味「区」や「村」、もしくは「町内」というレベルの話である。

何が言いたいのかというと、上記に挙げた成功者の意見も失敗者の意見も、実は都道府県レベルの粒度で考えたときにはあまり関係がない、ということだ。同じ地域に移住した人たちがいたとしても、全く違う意見となる可能性がある、ということだ。

 

では、成功・失敗を切り分けられる別の観点はないのか。

その重要なキーワードが「コミュニティ」ではないか、考えている。

 

例えば、移住前に東京で有力なコミュニティに所属している人(仮にAさん)がいるとしよう。そのコミュニティは、フリーのWeb制作者のコミュニティで活発に活動しており、田舎に移住して生活している人も多々いる。となれば、Aさんがどこか田舎に引っ越ししたところで、彼の属しているWeb制作者コミュニティと彼を結ぶつながりはほとんど影響を受けず、「コミュニティの所属感」を維持することができる。移住成功となりやすい、ということだ。

 

他の例を挙げよう。移住を考えているBさんがいた。彼は長い時間をかけて移住先αを検討し、その地域と関係をつくるため、αに住む人々と仲良くなった。5年後、彼はαに移住した。既に仲良くなっていた人がたくさんいたので、彼はうまくいった。

 

失敗例も挙げてみる。大学生で東京に出てきて10年、そろそろ地元に戻ろうとしているCさんがいた。Cさんは「もともと住んでいた場所だから、何とかなるだろう」と半ば勢いで地元に帰った。しかし、高校時代の友人は既に結婚したり、他の地域に出ていたりして、すでに「地元仲間のコミュニティ」はなくなっていた。就活をして地元企業に就職することができたが、その会社というコミュニティにはなじめておらず、価値観の相違を感じている。この移住は失敗だったか、と考え始めている。

 

会社での転勤などは、よくある事例かもしれない。転勤者は所属しているコミュニティが「会社」という大きな枠であり、引っ越しをしたとしてもそれほどコミュニティが変わるわけではない。

 

 

人は群れで生活する生き物なのだから、コミュニティを軽視すると失敗するのは当たり前なのかもしれない。たとえどんなにすばらしい場所でも、自分と全く価値観の違う住人ばかりが住んでいたとしたらまずうまくいくはずがない。移住において、「コミュニティ > 場所」ということなのだろう。とすれば、移住を成功させたい場合は、まず先に移住先においてコミュニティに所属し、そこで活動をすることが大事なのではないか。

 

「コミュニティに所属する」だけでは不十分で、そこで同じ価値観の仲間とふれあい、愚痴や相談ができる充分な友人となっている必要がある。つまり、そのコミュニティと自己の距離を縮め、密着する、ということだ。

最近はSNSの隆盛から、自分が所属しているコミュニティをどうも軽く、薄く考え、簡単に抜けたり入ったりできるものと考えてしまいがちであるが、実際には入って関係を構築するのは難しく、いったん抜けると関係性を復活させるのは難しい。同窓会を考えてほしい。かつて同じコミュニティに属していたもの同士で一夜限りの宴会は盛り上がるものの、では明日も明後日もまた会おうぜ、とはならない。既に関係性は糸のように細いものとなっている。

 

したがって、コミュニティに入ることではなく、入ってから自己の生活レベルまでそのコミュニティと密着するに至るプロセスのほうが重要だ。ある喫茶店に入り浸っていても、そこのコミュニティに密着しているとは言えない。コミュニティと自己との距離を知り、近づく必要がある。近づいていくプロセスでは、自己の価値観とそのコミュニティの価値観との重なりが広大であればあるほど大きなモチベーションとなるはずである。

 

最後に、忘れないように方程式を示しておこう。

 

  • コミュニティ(人の群れ) > 場所
  • 「場所」は、経済性や利便性、自然の美しさなど客観的価値を示す
  • コミュニティの価値 = 価値観の重なりの面積 ÷ 心理的距離

 

もちろん、生活するうえで人は複合的にコミュニティに所属するが、最も重要な2〜3のコミュニティの価値が幸福感を左右すると思う。