発見する器

日常の考察、真実の追求、感性にピンと来たもの、好きな音楽。

邪道の読書感想文

読者感想文の話が盛り上がっている。

 

正解などない読書感想文の、正解と言える書き方

増田先生、助けて下さい。 うちの子は、普段は色々考えているようですが、..

普段増田は書き逃げなんだけど、凄く切実そうに見えたので、大マジレス..

 

自分はクラスで一番に書き終えるほど得意なほうだった。ただし賞を取ったことはないので本当に速くこなすだけの読書感想文である。はっきり言って邪道だ。

何の意味もない。

 

ただそんな自分でも、読書感想文に苦手意識を持たなかったおかげで本を読むことに苦痛がなく、仕事でちょっとした物書きをすることがあってもそんなに嫌がらずに取り組めている。

周りの同僚を眺めると、文章を書くことに驚くほど苦手意識がある人も少なくない。そんな中にあって、読書感想文を苦にしなかったことが今につながっているのかなと実感する。

 

 

さて、その、邪道の読書感想文の書き方というのはどういう方法かと言うと、一言で言えば「内容には触れない」である。「読まない」と言い換えてもいい。

そして、わからないことを「わからない」と、ちゃんと書くということ。無理やりわかろうとしない。

だから、読書感想文に真面目に取り組もうという人には向かない。さっさと終わらして遊びたいぜ!っていう人向き。

 

具体的にはこういう感じだ。

まず、本当に適当に本を選ぶ。そして1ページも読まずに原稿用紙を書き出す。

当然、内容はわからないので、その本を選んだ動機やタイトルから想起される内容ぐらいしか書くことができない。

  • 私が選んだ本は「カラマーゾフの兄弟」です。内容はまったく知りませんでしたが、私には兄がいるので兄弟の話だと身近かなと思って、気軽な気持ちで手に取りました。
  • 「こころ」を選びました。この本を選んだ理由は、ただ単にお父さんの部屋の本棚に置かれていて、パッと目に入ったからです。何となくということです。それ以上の理由はありません。

動機も、はっきり言って適当だ。ぶっちゃけて言うと、ちゃんとした理由を書くより、ふんわりした何となくの理由を書いたほうがそれっぽいし、後で結論も結びつけやすい。

 

できればこの書き出しで、1/3から半分は埋めたい。バランス良く、なんて初心者にはおこがましい。なので、とにかく本を選んだシーンのことについて細かく書く。書くことがなくなったら、本を選ぶ前の日のことを書く。それもなくなったら、宿題が出た日のことも。

  • 先生から読書感想文の宿題が出たとき、私は嫌だなあと思いました。何を読んだらいいんだろう。どんなことを書けばいいんだろう。と不安になりました。
  • 本を買いに行く前の日、お兄ちゃんに相談してみました。お兄ちゃんにどんな本を買ったのと、聞いてみましたが、忘れてしまったようです。お兄ちゃんは、遊びに行ってしまいました。

フォーカスは「読んだ本の感想」じゃなくて、ちょっとぼかして「読書感想文をめぐる私の出来事」ぐらいにしておく。

 

本の値段について書くのもいい。

  • この本の値段は480円でした。私のお小遣いは月に300円です。とても高いと思いました。でもこの本を読んだら、私は国語が得意になれるかもしれません。

 

西尾維新的な語尾を繰り返す構文も、小さな子には厳しいかもしれないが有効だ。文字数が稼げる。

  • この本を買ったあと、家に帰るときに失敗したかなあと思いました。思ってしまいました。考えてしまいました。

 

あと、一度書いたら消さないようにすること。文字数がもったいない。言い直したらいい。

  • 私が選んだ本のタイトルは「羅生門」です。難しい漢字です。最初は読めませんでした。いや、それはちょっと違うかもしれません。「門」は読めました。「生」も読み方はわからなかったけど何となく意味がわかりました。私が本当に読めなかったのは「羅」です。
  • これを書いているのは、8月20日の夜7時です。いや違いました。カレンダーを確認すると、8月21日でした。間違いでした。夏休みもあと少しです。

 

接続詞は積極的に使わないこと。使いすぎると、それに引っ張られて考えにくくなる。接続詞がなければ真逆のことを書いてしまっても何となくごまかせる。

  • 読書感想文は怖いです。怖くないかもしれません。感想文を書いている今でもどっちかわかりません。

 

気持ちや考えよりも、自分の行動を細かく書いていくと文字数は稼ぎやすい。思い出すだけだから書きやすくもあるだろう。思い出したことから短く書いていこう。

  • この本を買ったのは家の近所の本屋です。自転車で行きました。暑かったです。すぐには見つかりませんでした。漫画の本棚は知っていたんですが、難しそうな小説や本が並んだ棚には近づいたこともありませんでした。店員の女の人に「人間失格という本はありますか」と聞きました。

 

 

そしてくどくどと動機やら本を買った時の出来事を書いたあとに内容の話に入るわけだが、ここはほぼテンプレ文でいい。本当は読んでないわけだし。

  • 読んだ感想は、正直に言ってよくわからなかったです。難しかったと思いました。どこが難しかったのと聞かれてもはっきり答えられないぐらい難しかったです。

もし少しでも読んだのなら、登場人物のことを少し書くとか。

  • 読むのに1週間ぐらいかかりました。主人公は◯◯という男の人でした。アメリカの人でした。日本の人じゃないのでふーんという感じでした。

まあこのような文章を、一段落ぐらい書けばいいだろう。多少アレンジしよう。

いずれにせよ、ここでのポイントはネガティブなことを書くことだ。「わからなかった」「難しかった」「ふーんとしか思わなかった」など。いいことを書こうとするとドツボにはまる。

 

この後に、あらすじを書くのも有効だ。古い名作ならどこかに紹介文が書いてあるだろう。

  • 本当にわからなかったので、あらすじを読み返してみました。「、、、」と書いてありました。少しだけ分かった気がしましたが、それでもよくわかりませんでした。読書は苦手かもと思いました。

 

ここまで書いてもまだスペースが余っているようなら、あとがきや同じ作者の他の作品について書くのもいい。多分、著者の略歴に書いてある。こういうのは短いが情報量が多く、升目を埋めやすいのでおすすめ。

  • あとがきは◯◯さんという方が書いていました。私は知りませんでしたが、有名な作家さんのようです。男の人です。
  • この作者は他にも「、、、」や「、、、」という本があるようです。「、、、」はまだもう少しわかるかもと思いました。どんな内容なんでしょうか?

 

さらに、適当にページをめくって、でてきた一文を引用するのもいい。

  • 例えば、◯◯ページに「、、、」と書いていました。これなんかは本当によくわかりませんでした。「、、、」ってなんだろう、「、、、」は何のことだろうって、混乱しました。

 

 

そうしてついに最後だ。ただここはうまく書こうとすると詰まる。逃げるのがいい。他にも書きたいことはあるが、原稿用紙がもうない、あるいは筆を置くことにする、的なものがいいだろう。別に尻切れトンボでいいのだ。

  • 他にもいろいろわからないことはあったのですが、書き切れないので終わりにしたいと思います。
  • いろいろと書いてきてよくわからなくなってきました。こんな感想文でいいんでしょうか。不安ですが…
  • やっぱり読書感想文は難しかった。みんなの読書感想文を読んでみたい。
  • 読書は大変だなあと思った。できれば工作のほうがいい。

ちょっと個人的な、わがままな感じにするのがポイントだ。wantだと締めやすい。

 

 

文字数を稼ぐテクニックには、余談や脱線、「ところで」を連発する方法もある。ただし、そんなのができる人は最初から感想文は苦ではないと思うので割愛する。脱線した文章を本筋に戻すのもちょっと難しいだろう。

 

* * *

 

以上のテクニックを使えば、原稿用紙3枚ぐらい、1200文字くらいならささっと書けるようになる。いや、埋められるようになる、か。

とにかく升目を埋めること、そのためには一つのことをくどくど書いたり、関係なさそうなこともこじつけて無理やり入れてしまうこと。楽をすることに頭を使うこと。

そうしてそのうち、やがていつの日か、ちょっと中身も読んで書いてみるかと思う日がもしも来たら、来てしまったら、そのときにちゃんと読んで書いてみたらいいんじゃないかと思う。

それぐらいでちょうどいいんじゃないかと私は思う。